Model Builderで実現する現場DX。現場の見える化を簡易かつ低コストで実現

Model Builderで実現する現場DX。現場の見える化を簡易かつ低コストで実現

インフラ保守に関するさまざまな相談が舞い込む、技術開発グループのミッションとは

ーー 貴部署での担当業務や、ミッションなどについてお聞かせください。

木藤さま:KANSOテクノスは関西電力株式会社の子会社にあたるため、電力会社様が保有している設備の点検業務、具体的には、コンクリートや金物などの点検を行っています。私はKANSOテクノスに入社して25、6年経つのですが、昔はインフラ設備に関する点検や修繕工事などの、現場を担当していました。数年前に経営企画の部門に異動し、会社全体の収支管理や、新規事業立ち上げに伴う新会社の設立などに係わり、現在は技術開発グループに所属して、新たな技術の探索や開発、特殊な受注案件の対応を行っています。
技術開発グループでは、新しい技術やツールを用いてDXのアイデアや付加価値を生み出せないか日々、模索しています。直接、開発に一気に資金を投資することが難しくなってきたため、主に既存の技術やアイデアの組み合わせを検討しております。顧客は今まで通りの電力会社様が多いですが、今までなかったようなさまざまな新しい業務や相談が舞い込んでくる状況で、コンサルタントのような役割も担っています。

3Dモデル作成の外注にかかるコストと、安全面に課題を感じていた

ーー Model Builderの利用を検討し始めた背景について教えていただけますでしょうか。

木藤さま:以前から、写真のオルソ画像などを使用して3Dモデル化する技術を検討していましたが、オルソ画像の作成や点群処理を行うには専門ソフトウェアなどの専門知識が必要となり、学習や作業の工数が多くかかるため、自社職員で取り組むイメージは全くありませんでした。このModel Builderに関しては動画をアップロードするだけでモデルの作成ができるので、「あ、これなら自分たちでも使えるな」と感じました。
電力施設や水力発電施設を保護するための点検構造物の例 (のり面)
電力施設や水力発電施設を保護するための点検構造物の例 (のり面)
ツールが手軽になったことにより、点群データや3Dモデルを活用し、さまざまな協力会社様と協力して付加価値を提供することで、顧客に売り込むことができると考えています。私たちが主体というよりも、協力しあいながらツールを利用する立場ですね。ただし、昨今は業務に対して「とにかく安く」という姿勢が主流ですので、点検業者様や測量会社様に本格的に測量を依頼したり、100万円程度の費用をかけて巻き込むのは少々気が引けます。ですから、点群化や3Dモデル化という部分が自分たちでできれば、さまざまな提案ができるのではないかと考え、活路を見出したのが始まりです。

ーー ありがとうございます。手軽さとコスト感が重要なんですね。

木藤さま:そうですね。自分たちでも簡単に扱えそうなことが大切です。
実際には協力会社様と一緒に手分けして作業したいと思っていますが、費用がかかることもありますからね。私自身は付加価値があると思えば、どんなに費用をかけてでも取り組みたいと思っていますが、ただ、お客様はそうはいかないのでこのModel Builderは有効だと思いました。

ーー 費用面の他に、実際の現場で課題や困っていたことはありましたか?

木藤さま:そうですね。やはり安全面での課題がありましたね。
のり面以外にも、例えば、定期的に発生する送電鉄塔の巡視をする人々を見ると、本当に山中の道なき道を登っていきます。そこでは落石防止のための浮石の調査などが行われていますが、そのような作業をする場所なので、落石はもちろん、滑落の可能性があります。それをドローンや360度画像を使って撮影しモデル化することで、「ここに浮石があるのではないか」といった可能性を示せたり、訪問回数を削減をすることができます。一度通れば全体がモデル化されて画像の位置も示せるので、十分な付加価値になるのではないかと考えました。

3Dモデルと360度画像で、現場をそのまま伝えることができる

ーー 現場状況を伝えることはやはり口頭や写真だけでは難しいですか?

木藤さま:現場訪問者以外に現況の詳細なイメージを伝えることは本当に難しいため、問題がある箇所のみ報告します。そのため全体像が分からないままですね。これ(モデル)ならば、全員が状況を把握できます。特に360度画像がプロットされる機能は撮り忘れもなく、気になる箇所は後から自分で見ることができるため、私としては非常に価値があると感じています。
3Dモデルと共に360度画像の位置が自動整理され、現場の振り返りが容易に可能
3Dモデルと共に360度画像の位置が自動整理され、現場の振り返りが容易に可能

ーー 現地に訪問した場合、現地調査の報告は行わなければいけませんよね。以前、スケッチするとおっしゃっていたか と思うのですが、スケッチをするシチュエーションとはどのようなものですか?

木藤さま:はい。例えば、点検などで修繕した方が良いと思われるような変状を確認し報告して、修繕工事を行うこととなった場合、工事計画をするために改めて現地へ行って実際に採寸する必要があります。修繕が必要なときは写真を撮って図面を作成する必要があるため、図面を作成する際に少し複雑な箇所がある場合は、スケッチやメモを取ることがあります。

現在はiPadなどで写真を撮ってメモを書くことができますが、モデルがあればより分かりやすいものができます。3次元で見ることもできるので、説明が困難な場合でも対応できます。やはり絵がないと伝わりにくいんですよ。写真だけではなかなか伝わりにくいと言えますね。建築は建物ですから精密な寸法が求められますが、土木工事は現地の状況によってそこまで厳密な寸法は求められません。数センチずれていたからといってそこまで問題はなく。そういう背景もあり、個人的には土木工事においてはModel Builderが非常に相性がいいと思っています。

そもそも現場での引き継ぎなども含めて、情報伝達やコミュニケーションを目的としたツールとしての活用を最初に考えていました。モデル上で説明した方が見えてくるものがありますから。災害時の迅速な状況報告や、コミュニケーションツールとしても有用です。状況がよりわかりやすくなるというメリットがありますよね。

人の手による労力をできる限り削減したい

ーー Model Builderに、今後開発を期待する機能があればお聞かせください。

木藤さま:差分検知ですね。ただ、これについてはもう少しニーズを掘り下げる必要があります。
現在、モデル化は実現していますが、その後のモデルの活用について、例えば出来高管理や災害前後の比較など、前後の状態を比較したいというニーズがあります。それをLASデータに出力して、測量業者様にお渡しして作業してもらうのであれば、最初から測量業者様に依頼すべきだと思われるかもしれません。ですから、差分検知ができるようになったら便利だなと思っています。例えば、モデルを比較すればAIが違う箇所だけを自動的に抽出できるとか。また、そのチェックだけで済むようになったら、概略的な点検はそれだけで完結できるようになるのではないかと思っています。

ーー 今後のModel Builderに対する展望についてお聞かせください。

木藤さま:今、活路を見出しているのが、トンネルなどの暗所点検ですね。内空寸法・明るさなど、どのような条件なら適用できるか確認したいと思っています。現在、トンネルの点検は基本的に人が行っていますが、明らかな事象が見つかった場所しか写真を撮っていません。そのため、技術の継承が難しいと言われている中で、点検頻度がますます減少し、10年に1回しか点検しないという状況になると、部署に10年勤めていても1度も当該トンネル設備に入れなかったということも起こりえるので。設備管理や修繕担当者もトンネルに入ったことがないということが発生します。そうなると現場に入ったことのない人同士が議論するといった状況になるかもしれません。

モデルで示すことができれば、私たち自身も「あ、こういう状況なのか」と見ながら理解できます。それを付加価値として認めていただけたらいいのですが。その他、河川に関しては、動画から詳細な起伏や断面のモデル化が可能になるか試してみたいです。何が当たるかわかりませんが、とてもポテンシャルのあるサービスだと思っていますので、引き続き検討し、お客様に価値を感じてもらえる活用を提案していきたいと思っています。

ーー ありがとうございました。